バングラデシュに暮らしてみた 繊維の仕事してみた
2020/02/29
バングラデシュに暮らしてみた
繊維の仕事をしてみた
「バングラデシュに駐在していました。」と言うと
「大変でしたね~」とリアクションされる事が多い。
皆さんにとってバングラデシュと言う国はどのような印象でしょうか?
私にとっては魅力的で!刺激的で!今なお愛してやまない国です。
そう言うと日本が嫌いなのかと思われるかも知れませんが、誤解がない様にお伝えしておくと、もちろん日本も好きですし、住んだことのある国で言えばベトナムも大好きです。
結果的に「住めば都」と言う事ですね!
私が現地でやっていた事は
現地駐在事務所の設立に始まり、スタッフ採用や人材育成、新規工場開拓に既存工場生産管理などなど
最初にバングラデシュを訪れたのは2011年1月
バングラデシュでイメージできる中で上位にくるのは「暑そう!」と言う事ではないでしょうか?
しかし予想を裏切る寒さだったと記憶しています。
10℃くらいなんですが、体感はもっと寒く感じました。
2011年当時はまだ最低賃金が3,000BDT(約4,000円)だったと記憶しています。
まだ一部の日本企業しか進出していなかったこの時期は本当に劣悪な労働環境でした。
どの工場に訪問しても工場内の整備がされておらず、児童労働も当たり前のように行われていて、管理者による体罰も頻繁に発生していました。
*この当時の工場の写真を見返すとやはり働く多くの子供が写っています。
小さな火災や崩落事故、そして労働争議なども頻繁に発生して決して安全と言える環境ではありませんでした。
もちろん品質管理レベルも良くない。
そんな中、2013年4月に発生したラナプラザ事件
2013年4月24日、1,000人以上が死亡する事故が起こった。バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落。死者1,134人、負傷者2,500人以上を出す最悪の惨事となった。
引用元:FashionSnap.com
この事故を受けての率直な気持ちは
「テロや戦争じゃなく、ただただ安いモノを追い求めた結果、人を死に追いやる事になるのか?」
と当時、そう感じました。
私自身がバングラに来た理由は紛れもなく、安い労働力を求め、低価格の衣料品を供給する為、つまり私自身がこの事件の直接的加害者になる可能性だってあったと言う事
幸いにしてこの事件以降、
欧米企業のサステナブルマインドが加速し、画期的に労働環境の改善が行われ、最低賃金も大幅(2014年12月末には77%UP)に上がり、今もなお労働環境や賃金の改善がなされています。
2011年に初めて降り立った時から比べると驚くべき変化だと思います。
ラナプラザ事件を題材とした「True cost」と言う映画に対して、
真実の姿が描かれていない。
大げさだ。
それがすべてではない。
言う意見や
ファストファッションは悪ではない。
大量生産は雇用を生み出すメリットがある。
と言った意見もあります。 賛否は私にもわかりません。
ただ私に中にあるのは「多くの人が死んだ」と言う衝撃だけです。
何が良くて何が悪いのか?私にはわかりません。
シンプルに死ぬべきではなかったと思うだけです。
おそらく大幅に改善された今となってはこのような惨事は起こる可能性は限りなく低く、この事件以降、ファッション業界でもサステイナブルやエシカルが叫ばれる様になり、より良い方向に向かっているのは間違いありません。
それこそ今となっては「True cost」の中で描かれた世界観も過去のものとなりつつあります。
そして私自身がシンプルに嫌な事
それは棄てると言う行為
環境問題がどうだ!と言う前に
自分が携わったモノが簡単に棄てられると言うのはあまり気分の良いものではなく、
できればすべて誰かの手元に届いてほしい。ただただそう思うだけです。
その思いからできるだけものは大切に長く使いたいと思います。
これは完全に偏見かもしれませんが、自社が扱う商品を大切に取り扱えない経営は自社の社員も大切にできるとは思えません。
売れなければ棄ててしまえ!
使えなければ首切ってしまえ!
発想の起点は同じだと思います。
モノを活かす事も人を活かす事も根本は同じだと思います。
工場に向かう道中
たった50km程の距離を渋滞がひどい時には片道5時間以上かけて帰ります。
インフラも少しづつ改善されています。
少し裏路地に入ればこんなダークな世界が広がってますが、実は家の近所
大量生産は多くの雇用を生み出すのは確かです。
しかし経済成長していけば、サービス業を始め、その他産業も栄えて行きます。
現状は輸出の80%を繊維産業に依存するバングラデシュ
大量生産が無くなれば、繊維従事者は減るかも知れませんが、その他産業での雇用が増えれば問題は軽減できるのではないでしょうか?
また賃金が上がったとは言え、その分、物価も上がっています。
そう考えると生活に充分な賃金を得てるとは言い難いと思います。
今では改善されているかもしれませんが、2016年当時では残業代未払いや賃金未払いなども日系企業がオーダーしている工場でも発生していました。
(今ではこんな事がない事を祈ります。)
バングラデシュに限らず、日本を含めて繊維製品のモノ作りに従事する方々の賃金は上がるべきだと思います。
多く作る必要のない賃金と多く売る必要のない販売価格設定
必要な時に必要なモノだけ供給できる体制
こんな言い方良くないかもしれませんが、現状の低価格でも消費低迷している訳ですから、すでに安いだけでは買う理由にはならないと言う事
なら一層の事、
買う事を躊躇する程の高い価格設定にすれば、その商品は長く大切に使って貰えるかもしれません(もちろんプロダクトの精度も求められると思いますが…)
安いから今まで以上に消費し、今まで以上に短い期間で棄てると言う行為も減少できるのではないでしょうか?
多く作る必要のない価格=多く売る必要のない価格
つまり関わるすべての人が生活に充分の収入を得れる価格設定であれば、薄利多売から脱却できると思います。
話はバングラデシュからだいぶそれてしまいましたが、
私は2016年7月1日に発生したダッカでのテロをきっかけに帰任する事になりましたが、もしこの事件がなければ今も現地でいたでしょうし、現在のアップサイクル活動をする事もなかった思います。
ラナプラザ事件で心が揺らぎ、テロで気持ちが固まると言うバングラデシュで経験した2つの事件で人生が大きく変わりました。
最貧国と言われる国ではありますが、心の貧しさは感じませんでした。
みんな明るく、優しく、親切でとても親日家です。
住んでいてもアウェー感を感じる事はありませんでした。
*大阪で生まれ育ち、初めて東京に住み始めた時の方がアウェー感ありました
・何もない分、ストレスもなかった
何もないから欲求も湧かない。求めても仕方がないと思うと意外にストレスもない。
・選ぶ選択肢がない分、一つの事に集中できた
あれもしたい、これもしたい。と思うと意識が散漫しますが、できる事が限られると集中できる。
・すべてが不完全な分、苛立ちもなかった
時間どおりに事が進まない。思うどおりに事が進まない事が当たり前すぎて、許容の幅が広がる。
便利で何でも安く手に入る日本で生まれ育ち、なに不自由なく暮らしているつもりでいましたが、実はこれは人間らしい生活を送っていないのだと気づきました。
これがバングラデシュに住んでみた一番の気づきです。
本当は人間なんて不完全なモノなのに、いつしか当たり前の様に完璧を求め、少しのミスや過ちすら許容する事ができず、生活にストレスを感じる。
社会の中に常に優越感と劣等感を抱える人が存在し、見えない序列が生じ、学歴・業績などの数値化できる尺度で人を判断する。
本来、人間の評価は数値化できない部分に存在している気がする。
優しさや懐の深さなど
なにもなかった国だけど、とても大切な事を学べた、気づけた国だった。
行く機会はないかもしれないけど、これからの成長を見守りたい。
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